実は俺、女の子だったんだ。
二人でベッドに転がっていたら突然、軽井がそんなことを言い出した。
そういえばエイプリルフールだったなと、今日の日付を思い出しては手の中のスマホへと視線を戻した。
エイプリルフール2023
「……あの、ひらっちさん。無反応ほどつらいものはねーんだけど」
上半身を起こした軽井が俺の頬を突いてくる。
どうしても反応をしてほしいのか、強めに突いてくるせいで少し痛い。
「だってお前が女じゃないって知ってるし」
ついてんじゃん、と言葉を続けながら仰向けの体勢からうつ伏せの体勢へとなり、近くに転がっていた枕を引き寄せては顎と胸の下へと置く。
その体勢のままスマホをいじっていると、横からなぜか大きな溜め息が聞こえた。
この返答じゃ不満なのかと、横にいる軽井へ顔を向けてみると、こいつも俺のことを見ていたらしく目が合った。
眉尻を下げ少しだけ困っているような表情を見ていたら、悪戯心がわいてきた。
「……お前のこと好きだよ」
笑ってくれればいいのに、なぜか訪れる静音。
やっぱり言わなきゃよかったか、と少しだけ恥ずかしくなっていると、上半身を起こしたままだった軽井が大きく息を吐き出しながら手のひらで自身の顔を覆った。
「あのさー、ひらっちさぁ、本当にもう……」
「なんだよ」
横にいたはずの軽井が俺に覆い被さってきた。
背後にいるため細かい動きはよくわからないが、どうやら俺の襟足に触れているようだ。
「かる――」
首の後ろにやわらかなものが触れた。
ちゅっ、と高い音を立てながら何度も吸い付いていく。
「ちょっ……」
突然のことに慌てて身を捩ろうとするが、いつの間にか腰にのしかかられていたせいで動くことができなかった。
「なぁ平江」
耳元で囁くように名前を呼ばれた。
「抱かせて……」
どこでそんなスイッチが入ってしまったのか。
そう聞きたかったのに、俺の体を撫でる手のせいでなにも聞くことができなかった。
(終)
『あれ、エイプリルフールってことは俺のこと好きじゃないってこと?』
『……さあ、どうでしょう』
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