ドS注意報!


 気まずい空気が流れている。
 どうして俺は『俺様はドSサンタだ!』なんて口走って先輩を誘ってしまったんだろうか。
 俺と同じようにベッドの脇へと座り込み、顔を手のひらで覆っている先輩を横目で見つめてみると、耳がほんのりと赤く色づいていることに気がついた。
 そんな彼に釣られるよう頬を熱くしながら、ゆっくりと手を伸ばせばベッドに置かれていたほうの手に自分自身の手を重ねてみる。
 すると驚いたように彼は顔を上げ俺を見る。


「……先輩。変なことして、すいません」

「いや……つーか戻ったのか」

「お騒がせしました」


 未だに顔を熱くさせながら苦笑いを浮かべると、顔を覆っていたほうの手が俺の頬へと触れた。
 まるで猫の頬を撫でるような親指の動きにわずかに目を細めると、小さな笑い声が聞こえた。


「猫みたいだな」

「……にゃー」


 普段、言うことのないことを口に出しながら細めていた目を開くと、先輩はわずかに目を開きながら俺を見ていた。


「あ、やっぱ無理。今のはなしでお願いします」

「……唯」


 言わなければよかった、と顔を俯かせると、そんな俺を追いかけるよう先輩は顔を覗き込んできた。
 どこか熱の持った瞳に、思わずゴクリ、と喉がなる。


「可愛い」


 未だに言われ慣れることのない言葉に、さらに顔を熱くした俺はその場から逃げ出そうと立ち上がり部屋を出ていこうとするが、重ねられていた先輩の手がいつの間にか俺の手首を掴んでいたため動きがとまる。
 その瞬間、俺は体を引っ張られ気付けばベッドへと押し倒されていた。


「せ、先輩!」

「気が変わった」


 なんだか、とても嫌な予感がする。


「昼間からってのも悪くねぇ」


 ああもう、どうしてこうなった!




  (終)