飼い主と首輪と


 事後の甘い雰囲気。
 恥ずかしさに染谷先輩に背中を向け毛布を口元まで持ち上げていると、後ろ髪のいじられる感覚にわずかに肩が震えた。
 それでもそのまま放っていると首筋に鋭い痛みが走り、思わず声を上げてしまう。


「な、なにしてるんですか!」


 痛む部分を手のひらで押さえながら先輩へ顔を向けると、彼は口角を持ち上げ悪戯な表情を浮かべながら俺を見ていた。


「お前がこっちを見ないからだろ」

「だからって、別に噛むことないじゃないですか」

「うるせぇ」


 腰に腕をまわされ、引き寄せられる。
 お互いに服を着ていないため素肌が触れ合い、なんだかくすぐったい。


「……寂しかったんですか?」

「っ、んなわけねぇだろ」


 そう言いながらも強く俺の体を抱きしめてくる先輩の行動に、小さく笑いながら首を押さえていた手を彼の背中へとまわす。
 そしてふと、先輩の首にいつも巻かれているものがないことに気がついた。


「先輩、首の──」

「あぁ?」


 どうやら機嫌を損ねてしまっていたようだ。

 それでも体を離すことのない様子に口元を緩めると、ベッド脇に青色の長い紐が落ちていることに気がついた。
 それを手に取り、先輩の首へと緩く巻き付けてみる。


「……おい、なにしてんだ」

「んー、首輪? なんちって」


 なんて笑ってみせると、先輩は驚いたように少しだけ目を見開いたあと、俯き息を吐きだした。
 かと思うと巻き付けていた紐をするりと解き、今度は俺の首へと巻き付けてきた。


「……あの、先輩? なにしてるんですか?」

「首輪なんだろ?」


 最後に蝶々結びにし、放たれた言葉に視線を持ち上げ先輩を見ると、まるで獣のような鋭い目を俺に向けていた。


「唯、お前は俺のだな?」


 体を起こし、俺に覆いかぶさる先輩の熱っぽい声が、息が耳にかかる。
 首に巻かれたままの紐を撫でる手の動きがなんだかいやらしい。


「せん、ぱい」

「言えよ。お前は誰のだ?」

「俺……は、染谷先輩の、です」


 体を撫で回す手に声を震わせながらそう告げると、よくできました、とでも言いたげな満足そうな表情を浮かべてきたため、まあいいか、なんて思ってしまった。

 首に紐を巻きつけたまま、俺は先輩を求める。
 そんな俺に先輩は深く答えてくれる。

 いっそ、本当に首輪をつけてもいいかも。
 なんて、ぼんやりとした頭で考えてしまった。




  (終)