シロクロデイズ〜白柳 悠夜〜
いつものバー、そして奥の部屋。
一人がけの椅子へと腰を落ち着かせると、向かいのソファに座った金久保が眉間に深くシワを寄せたまま俺を見る。
「シロと黒滝はどうなってる」
わずかに声が震えているような気がする。
「シロはまだ記憶が戻らない。黒滝は……青木葉のところにいるらしい」
金久保の目が大きく見開かれた。
驚くのも無理はない。
青木葉のせいで兄貴は入院することになった。
青木葉のせいで兄貴は黒滝のことを忘れた。
それなのにそんな青木葉のもとに黒滝がいるなんて、信じられない。
「青木葉のことは赤嶺が探してる」
「一人だと大変だろ。俺も探す」
そう言い腰を持ち上げた金久保がなにかに気づいたように俺を見下ろした。
「シロのことはどうする」
その問いに一瞬だけ俺を見下ろしている金久保を見遣る。
「俺がそばにいる」
「……そういやお前ら、兄弟だったか」
納得したように頷き、俺に背を向け部屋から出て行こうと扉を開いた金久保がもう一度俺を見た。
「昔シロから聞いたが、お前小さいとき入院してたんだってな」
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