シロクロ番外編〜BANGAI〜


 俺は青木葉さんと付き合い、一緒に暮らし始めた。
 シロのことは気にならないと言ったら嘘になるけれど。




  弱虫人




「黒滝くん、おはよ」


 名前を呼ぶ声に意識が浮上する。
 寝返りをうち、重いまぶたを持ち上げてみると目の前には青木葉さんの顔が。
 初めて会ったときとは違う、優しげな表情を浮かべている彼の顔が近付いてきたかと思うと額に口付けを落とされた。


「青木葉さん」


 名前を呼びながら両腕を伸ばせば彼の体を引き寄せ、その胸元へと顔を埋め再び目を閉じる。


「あと、五分」

「……ったく、仕方ないな」


 俺の髪をすく、青木葉さんの手が心地いい。


「もっとさ」

「ん」

「もっと俺に甘えなよ」

「甘えてる」


 髪に触れていた手が俺の頬に、指の腹が唇を撫でている。


「もっとだよ。俺なしじゃ生きていけなくなるくらい」


 指ではない、やわらかく温かいものが俺の唇を塞いだ。
 軽いものから深く熱く、そして一つになる。


 もしかしたら青木葉さんは、俺がまだシロを気にしていることに気がついているのかもしれない。
 シロの隣より青木葉さんの隣にいるほうが安心するなんて、それを認めることがまだ怖い。
 それでもいつかきっと、素直になって青木葉さんの手を取りたいと思う。


「だから……」

「ん?」

「なんでもない」


 開きかけた口を閉ざし、人肌を求めるよう隣の青木葉さんへと寄り添えば目を閉じた。




  (終)