シロクロ番外編〜BANGAI〜
雨のち晴れ
雨の音で目が覚めた。
カーテンは閉じられているが、窓の外はまだ暗いことがわかる。
まぶたを力強く閉じ、眠りの中へと落ちようとしてみるがなかなか寝付けない。
寝返りを何度も打っていたことで目が覚めてしまったのか、隣で眠っていたはずの白柳先輩が体を起こしたことがわかった。
「黒滝、どうした」
「……すいません、起こしましたよね」
そう口は謝罪の言葉をもらすが、先輩が起きてくれたことに内心ほっとしていた。
「眠れないのか?」
「ん、ちょっと、うるさくて」
「雨か」
白柳先輩は知っている。
俺の両親が事故に会った日は雨が降っていたこと。
シロが俺のことを忘れた日も雨が降っていたこと。
雨は、俺の中で恐怖の対象でしかない。
「黒滝」
優しく名前を呼ばれ、俯いていた顔を持ち上げてみるとすぐ近くに先輩の顔が。
啄むような軽い口付けをくれたかと思うと、そのまま彼の腕の中へと閉じ込められてしまった。
突然のことに驚いたが、その場から離れることなく彼の胸へと顔を寄せ目を閉じると心音が聞こえてきた。
定期的に俺の耳に伝わってくるその音は、聞いていて心地いい。
リラックスしている俺に気がついたのか、頭上から小さな笑いが聞こえた。
「これで眠れるならいつでもこうしてやるから」
「……先輩」
「だから……おやすみ、黒滝」
頭になにかが触れたことがわかるが、それがなんなのか把握するよりも先に俺は眠りの中へと意識を手放した。
もう、雨の音は気にならない。
(終)
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