シロクロ番外編〜BANGAI〜


  桜の花びら


 桜の花びらが心地よい風とともに窓から入ってくる。


「このアパートの横って桜の木、生えてるんだな」


 窓から顔を覗かせ、桜の木を見上げていると一枚の花びらが頬を撫で手のこうへと落ちる。
 その花びらを指先で摘むと、背後から声が聞こえた。


「これならわざわざ外にでなくても花見できるよね」


 そう言われると確かにそうだ。


「……いやいや、花見くらい外に出ろよ」


 納得しそうになり慌ててツッコミを入れると、笑い声が聞こえたため振り向いてみる。
 すると、本を手にしたままベッドへ寄りかかっている青木葉さんがやわらかい微笑みを浮かべながら俺を見ていた。
 そんな彼に近寄り、摘んだままの花びらを本のすき間へと滑らせてやるが、気にしていないのかそのまま本を閉じられてしまった。


「来年には押し花になってるかもね」


 微笑みを浮かべたままの青木葉さんの顔が近づいてきたため、それを拒否することなく受け入れる。
 そのまま流れるようにお互いベッドへ倒れ込むと、開かれたままの窓の向こうに桜の木が見えた。

 来年こそは外に出て花見をしよう。
 そう誓いながら、俺はゆっくりと目を閉じた。




  (終)