白黒病〜YAMI〜


  とろみ苦味の秘密


 どうしてこんなところにいるのか。
 俺がそう考えてしまうのも無理はないと思う。


「黒滝くんと一緒に住めたら幸せだろうね」


 そしてこの会話はなんだ。
 どこからこんな話題になったのかもわからない。
 ただわかることは、俺は今、青木葉の家で飯をご馳走になっている。
 驚くことに、青木葉の作る飯はどれも美味い。


「俺も青木葉と住めたら幸せだろうなって思うな。こんな美味い飯、俺じゃ作れないからさ」

「……ご飯、美味い?」

「ん。ちょっと苦味があるけどそれがいい味出してるし、このとろみもいいよな」


 初めて食べる味だけど気に入った、と伝えると青木葉は一瞬だけ目を見開いたあと、嬉しげに目を細めて笑ってくれた。


「ね、いつか本当に一緒に住もうか。そしたらその苦味ととろみの秘密教えてあげるよ」

「その秘密は確かに気になるけど……まあ、いつか、な」


 残っていた一口分のそれを食べ終え、『ごちそうさま』と告げるとなぜだか『ありがとう』と返された。




  (終)