白黒病〜YAMI〜


  罪の歯車と共に


『お前の願いは全部俺が叶えてやる』


 白柳先輩は毎日のように、そう同じ言葉を繰り返している。
 いつから先輩がそんなことを言うようになったのかはもう覚えてはいない。
 そして今日も、いつもの屋上で同じことを言われた。


「……先輩、いつも同じこと言いますよね」

「嫌か?」

「嫌っていうより、ちょっと寂しいです」


 フェンス越しから街を見渡したあと、隣に立っていた先輩を見上げると、彼も俺を見ていたらしく目が合った。


「先輩。もし俺を殺してくださいって言ったらそれも叶えてくれるんですか?」

「……もし、黒滝がそれを願うなら、お前を殺してから俺も死ぬ」


 先輩の手が俺の首をなぞり、頬を包み込む。
 そして次に降ってくる口付けを拒むことができない俺は、罪だ。

 あの優しかった先輩をこんな風にしてしまった俺は、その罪を背負って生きていかなければいけない。
 例え寂しくても、泣いてしまいそうでも。
 それでも共に生きていく。




  (終)