地球最後の日




 地球の命が今日までだったらどうする?



「……え?」


 一瞬、なにを言われたのか理解ができず、思わずそう聞き返すが返ってきた答えは先ほどと同じものだった。


「さっきアラタに聞かれてさ。カナエだったらどうするのかなって」


「難しい質問だね」


 いつの間にか俺が腰を下ろしているソファの隣に座っていたタマキ君に一度だけ笑いかけては、視線を外して考える仕草を見せる。


 レイには会いたいがナイツオブラウンドに戻ろうとは思わない。

 だからといってこの部隊のみんなと一緒に過ごすというのもなにか違う気がする。


「俺は最後までカナエといたいって、そう答えた」


 それならどうしたいんだ? と自問自答をしていると、俺の隣にいるタマキ君の呟きが耳に入ったため唇に添えていた指を話して彼へ顔を向ける。

 と、彼は黒い瞳を細めながら俺を見つめ、優しげに笑っていた。


(ああ、そうか)


 彼に声をかけられるまで静かに読み進めていた、膝の上に載せられていた古びた聖書を革張りのソファの上に置いてはゆっくりと腕を伸ばし、俺よりも一回りほど小さい彼の体を抱きしめる。

 驚いたように俺の名前を呼ぶ彼の声が心地よくて、抱きしめられたことに抵抗をしないことが嬉しくて思わず頬が緩む。


「俺も、タマキ君といたい。タマキ君と一緒なら怖くなんてないよ」


「カナエ……」


「タマキ君、好きだよ」


「……俺も」


 少しだけ間を置いてから放たれた言葉に、抱きしめている腕に力を込めながら彼の肩に顔を埋めた。


 例えこの地球が滅亡しようとも、タマキ君の隣にいるのが俺だといい。




  (終)