夢見て笑って
孤児院の子供たちは今日も笑ったり泣いたり怒ったり。
ころころと変わる表情は見ていて微笑ましい。
乾いた洗濯物をたたんでいた俺は走り回る子供たちを眺めながら表情を緩める。
「子供ってさ、見てるだけで楽しいよな」
たたんだ洗濯物を手に立ち上がり、俺の背に立っていたトキオへ顔を向けると彼は珍しく驚いた表情を浮かべていた。
「バレてるとは思わなかった」
「何年、一緒にいると思ってるんだよ」
「そういえばそうだったな」
そう言いながら俺の髪を撫で上げる彼の手がくすぐったい。
その手に小さく笑いながら再び子供たちへ顔を向ける。
「もしさ、トキオとの子ができたらどんな子になるんだろうな」
俺の頭を撫でていた手の動きがとまる。
失言だっただろうか、などと考えながら視線を彼へ戻すとやわらかいなにかが俺の唇を塞いだ。
何度かまばたきを繰り返しながら彼を見つめていると、顔を離した彼がちらりと赤い舌を覗かせた。
「なに、夜のお誘い? 新しいな」
再び顔を近づけてきた彼の唇を慌てて両手で塞いでは『違う!』と声を張り上げてやる。
すると諦めたように俺から距離を置き、なにかを考え出す。
「…… きっと、タマキに似て真っ直ぐでさ、ころころ表情が変わって、可愛い子だよ」
「きっと料理も上手なんだろうな。家事も手伝ってくれてさ……トキオに似て」
彼の綺麗な瞳が俺をとらえたため、笑いかけてやると深く息を吐き出しながら俺の腰に腕をまわしてきた。
かと思うと肩に顔を埋め『お兄さんノックアウト』なんて言った彼の言葉に思わず小首を傾げる。
「タマキ、今夜は子作りに励もうか」
「そんな恥ずかしいことよく平気で言える……でも、トキオがしたいって言うならいいぞ」
嬉しそうに笑う彼に触れるだけの口付けを落とすと、走り回っていたはずの子供たちから声が上がり、我に返った俺は手にしていた洗濯物でトキオを殴りつけた。
(終)