悪夢あげいん〜AKUAGE〜
真っ赤な髪で、上半身裸の男がこちらに向かって歩いてきている。
そして俺は見てしまった。
こちらに向かってなにかを投げたのはこの男――五条だ。
「失せろ」
その一言で、俺に絡んでいた男は青ざめ倒れている仲間を肩に抱えて去っていく。
それに釣られるよう俺もその場を去ろうとしたが、歩くことができなかった。
今、俺の肩を掴んでいるこの手は誰のだ。
寮長室でも似たようなことがあった気がするが、気のせいだ。
「おい」
後ろから五条の声が聞こえる気がするのも、きっと気のせいだ。
「おいっつってんだろ」
「ひょぉおっ、なんでっしゃろか!」
耳に当たる生暖かい息。
脳を犯すような美声。
ゾワゾワ、と鳥肌を立てた俺は勢いよく五条から距離を置き振り向く。
その瞬間、俺に向かって放られたものを慌てて両手でキャッチする。
「食ってから気づいたからな。返す」
そう言い、俺に背を向けて去っていく五条の後ろ姿を呆然と見つめてから、キャッチしたものを見下ろしてみる。
するとそれは五条に食べられたものと全く同じプリンだった。
「……中身グッチャグチャじゃん」
食べ物を粗末にしたらオバケ出るんだぞ。
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