悪夢あげいん〜AKUAGE〜
そう言いたいのをなんとか堪えながら差し出されている唐揚げを丁寧にお断りしてやる。
すると俺が座っていた椅子の足をガツンッ、と強く蹴られてしまった。
なぜだ。
「食うだろ?」
「いや、あの――っうお」
どう返そうか言葉を濁した瞬間、再び椅子の足を蹴られた。
バキリ、なんて嫌な音が聞こえたかと思うと、俺の体は傾いていく。
椅子の足が折れたんだとわかったときにはすでに遅く、俺の体は床の上に転がっていた。
そしてそんな俺になぜか五条が覆い被さっている。
「ご、五条早まるな! 俺なんか抱いたって面白くな――」
「食え」
口内に放られた唐揚げ。
どうやら早まったのは俺だったようだ。
「どうだ?」
「……美味い、です」
俺が作った唐揚げだけどな。
とりあえず俺の上から早く退けてくれ。
そんな俺の願いが届いたのか、ようやく体を離してくれたかと思うと椅子に座り直し、再び飯を食べ始めた。
今日の俺の晩飯は唐揚げ一個か。
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