悪夢あげいん〜AKUAGE〜
次の日の俺はとにかく腹が減っていた。
昨日の晩は五条に食べられてしまったし。
朝は寝坊して食べ損ねてしまうし。
授業中、腹が鳴らないようにどれだけ神経をすり減らしたことか。
「や、やっと飯にありつける」
そして昼休み、俺は苦手な食堂に来ていた。
なぜ苦手なのか、それはもう少ししたらわかることだ。
とろろそばの食券を購入した俺は窓口へ向かい、いつものおばちゃんに渡そうとして動きがとまる。
そこにいたのは明るすぎない茶色の髪に笑顔がとても似合っている美形さんでした。
(イケメンは三角巾を被っててもイケメンなのか)
そんなくだらないことを考えながら食券を渡すと、やわらかな声で『ちょっと待っててね』なんて言われた。
なるほど。
いつもに比べて食堂に人が多いと思ったらそういうことだったのか。
俺的にはいつものおばちゃんのほうが好きだけれど。
……一応、否定するけど熟女好きってわけじゃない。
脳内で一人ツッコミを繰り返していると、窓口から声がかかったため置かれていたトレイを受け取る。
だが自分のほうに引き寄せることができないのは、このトレイを掴んでいる人が他にもいるからだ。
「……あの?」
「いつものおばちゃんがぎっくり腰になっちゃって、今日からここでバイトすることになった四之宮(しのみや)です。これからよろしくね」
「はぁ、よろしくお願いします」
まさか一人一人にこうやって挨拶してるんだろうか。
それはなんというか、ご苦労様だな。
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