悪夢あげいん〜AKUAGE〜






 昼休み、その後の授業が終わり今、俺はコンビニで買い物をしている。
 不良に絡まれることもなく無事、卵をカゴに入れたとき、三角巾を被った見覚えのある美形さんが目にとまった。
 名前は確か……しのやみ、だったか?
 なにか違う気がするけどこれから先、関わることはないからどうでもいいか。


「ね、どっちの肉がいいと思う?」

「こっちの肉は色が死んでるんでこっちのほうがいいんじゃないですかね」

「そっか。ありがとうございます、一森くん」


 関わることはないと思っていたのに、なんでこの人は話しかけてきてるんだ。
 しかも教えてないのになんで名前バレてるんだ。

 口も開かずにジッ、とやわらかな笑顔を浮かべているしのやみさんを見つめていると、彼もそのことに気がついたのか一瞬だけ眉を揺らしたあと、『なんでもない』なんて言われた。
 なんでもないなんて言われたら逆に気になるけど、自分のためにも触れないほうがよさそうだ。


「か――君はなに買いにきたの?」

「俺はちょっとオムライスの材料を」


『それと一森でいいですから』と付け足してやると、目の前の彼はわずかに眉尻を下げながらごめんね、なんて謝罪した。
 別にそこまで気にしてないのに、なんて考え、今さらながら辺りを見渡すが誰もいないことに短く息を吐き出し安心した。


「大丈夫だよ」

「え?」

「俺もこの学校についてはちゃんとわかってるから」

「……あの、失礼ですけどあなたは」

「俺も昔、ここに通ってたんです」


 懐かしむように目を細めた彼に、それ以上のことを聞くことができなかった。
 だってどこか傷ついたような、悲痛な表情を浮かべているのに聞くなんて、そんなこと無理だ。
 そんなしのやみさんの表情を見つめて数秒、突然、彼が目をわずかに見開いた。


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