悪夢あげいん〜AKUAGE〜


「あ、そういえばこれ内緒だったんだ」

「え」

「……一森くん」

「あーもう、わかりました。聞かなかったことにしますからそんな顔しないでください」


 今にも泣いてしまいそうな、そんな表情を浮かべるものだから思わず投げ遣りにそう返してしまった。
 それでも嬉しそうに、やわらかく微笑むしのやみさんはすごく綺麗だと思った。
 ノーマル寄りのバイな俺でも『この人ならいけるかも』と思ってしまったくらいだ。


「ありがとうございます。一森くんは優しいね」

「そんなこと、ないですよ」

「そんなことあるよ。だから、今度こそは、間違えない」


『どういうことですか』と口を開く前に、男にしては珍しい細くて綺麗な指が俺の真っ黒な髪を撫でた。
 突然のことに、息を呑んでしまったときにはすでに遅く、彼は買い物カゴを手にレジへ向かってしまった。
 慌てて呼び止めようとするが新たにコンビニにやって来た生徒たちの話し声に、俺は口を閉ざすしかできなかった。


(……一体なんだって言うんだ)


 昨日から訳のわからないことが続いて、なんだかむしゃくしゃする。
 そんな苛立ちをどこにぶつけていいのかわからず、手に取った玉ねぎを投げつけるように買い物カゴへと放った。


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