悪夢あげいん〜AKUAGE〜


 ケチャップライスが出来上がり、ようやく卵に取りかかったときだ。
 突然、背から誰かに抱き締められ、思わず『ひょっ』なんてマヌケな声を上げてしまった。


「えっ、ちょ……え!?」

「臭うな」

「汗臭いですか」

「違う。なんの臭いだこれ」


 そんなの俺が知るはずがないだろ。
 今までケチャップライス作ってたんだからケチャップの匂いじゃないのか。
 てか、そんなのどうでもいいから早く体を離してくれ!

 卵を片手に固まっている俺に気がついているのかどうなのか、耳裏に生暖かいものを感じた俺は卵を握り潰してしまいそうになった。


(息がかかってて、気持ち悪い)


「あぁ、これあの臭いだな」

「なんの臭い、ですか?」

「食堂にいる奴の臭いだ」


 誰のことだよ。

 と、相変わらずそうツッコミを入れ(心の中で)、食堂で関わった人のことを思い出そうとする。
 とはいっても、食堂で話した人なんて五条を抜かせば一人しかいない。


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