悪夢あげいん〜AKUAGE〜


「しのやみさん、ですか」

「誰だ」

「え! しのやみさんじゃないんですか?」

「……四之宮のことか?」


 それだ!

 そういえばコンビニでも会ったな、と考えつつ、未だ離れる気配のない五条に小さく息を吐き出す。
 それを無理やり剥がしてしまうほど度胸があるわけでもない俺は、その体勢のまま卵を割った。


「四之宮さんと知り合いなんですか?」


 そう尋ねてから、しまった、と思ったがすでにもう遅い。


(あまり関わらないようにって思ってたのにな)


「アイツと知り合いなのは俺の兄貴だ。アイツとは話したいとも思わねぇな」

「……嫌い、なんですか?」

「アイツも俺の兄貴も、顔を見るだけで殴りたくなる」


 なんで、と出そうになった言葉を慌てて呑み込んだ。
 昨日今日、知り合ったばかりの俺がそこまで突っ込んでいいはずがない。
 それに、聞いてしまったら元に戻れなくなるような気がした。

 うん、やっぱり平和が一番だな。


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