悪夢あげいん〜AKUAGE〜
その後は話しかけることもなく、話しかけてくることもなく無言だった。
オムライスが完成し、飲み物と一緒にテーブルに並べ椅子に座ろうとしたときだ。
「そういや俺の椅子……」
昨日、五条に足を折られたまま放置してたな。
まさか床に座って食べろと申すか。
そんなことを考えながら辺りを見渡すと、部屋の隅に足の折られた椅子と、傷のない新品な椅子が一つずつ置かれていた。
「お前が学校行ってる間に寮長に話して新しいのもらってきたんだよ」
「そうだったんですか」
『ありがとうございます』と言葉を続けながら新しい椅子をいつもの場所へ配置してから、腰を落ち着かせる。
すでにオムライスを食べ始めている五条に視線を送りながら、ケチャップへと手を伸ばす。
「……美味しいですか?」
「あぁ、うめぇ」
尋ねると返事をしてくれる。
そんな当たり前のことが嬉しくて。
それでもやっぱり平和に過ごしたいっていう考えがあって。
俺は顔を綻ばせるだけで、その言葉に返事をすることはなかった。
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