悪夢あげいん〜AKUAGE〜


 そう言ってやれたらどんなにいいか。
 小さな溜め息をこぼし、太ももに触れる手と髪を拭う手をそのままにようやくプリンを口に含む。
 だが口に含んだプリンは一瞬で外へと吹き出されてしまう。
 俺がプリンを吹き出す原因となった部分を見下ろすと、五条の手がきわどい場所に触れていた。


「なに、して」

「気にすんな」

「いやいやいや、さすがに気にしますから!」


 さらに中心に近づいていくことに、慌ててその手首を掴むと舌打ちが聞こえた。
 それでも俺は手首を掴んでいる手を離すことはしない。

 そんな体勢のまま睨み合っていること数分。
 突然、リビングに聞き慣れないメロディーが響き渡った。
 その音に反応をしたのは目の前の五条で。
 二度目となる舌打ちをしたかと思うと、きわどい部分に触れていた手がようやく離れた。
 ポケットから携帯を取り出し、画面を見た彼は立ち上がる。
 そのことに安堵したその瞬間。

 五条の、ピアスの付いた舌先が俺の口端を舐め上げた。
 突然のことに反応ができなかった俺に、五条は『プリン付いてた』なんて言い部屋を出ていった。


「なん、だよ」


 口端を舐めた五条の熱い舌が。
 意外にもひんやりと少しだけ冷たかったピアスが。


(……思い出すだけで顔が熱くなるとか)


 バイだとしても(ノーマル寄りだけど)、ああいうのはタイプじゃないだろ、俺。


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