悪夢あげいん〜AKUAGE〜
あまり寝れなかった。
あのあとに食べたプリンの味だってあまりわからなかった。
「……最近、色々ありすぎだろ」
今まで一人で平和に過ごしていた俺には濃すぎる二日間だ。
どうしてこんなことになってるんだろうか、と考えても急に日常が変わってしまったからわからない。
(寮長さんに捕まってからだよな)
そんなことを考えながらベッドの脇に置いたままの携帯を手に取った俺は、今の時刻に目を大きく見開いた。
また遅刻かよ!
そう叫び、またもや朝飯も食べずに部屋を飛び出した。
どれだけ急いだって遅刻に変わりはないけれど、俺は走っている。
昨日もそうだったけれど、誰も歩いていない校舎内を走ると自分の足音だけが響く。
それがとても悪いことをしているような気分で、それでいてなんだか楽しく感じられる。
息を切らしながら走っていると、ようやく見えてきた自分の教室。
その教室のとびらの前にはクラスの担任と、マリモがいた。
いや、マリモは少し失礼だったな。
モジャモジャと、まるで鳥の巣のような黒い髪に、黒縁の瓶底眼鏡。
そんな彼が走っている俺の存在に気がついたかと思うと、なぜか手を大きく振ってきた。
しかも満面の笑顔だ。
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