悪夢あげいん〜AKUAGE〜


 内心、そう叫びながら再び視線を零に戻そうとしたときだ。
 ゾクリ、と冷や汗が出てしまいそうになるほどの鋭い視線を感じた。
 そんな視線を送ってきている三牧先生は一体、誰に怒りを感じているのかなんて、俺がその視線を浴びているんだから俺に怒っているんだろう。

 漆黒の髪と同じ色の瞳に睨まれると、まるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。
 確かに遅刻をした俺が悪い。
 けれど、なんでこんなにも緊張しなきゃいけないんだ。


「一森、さっさと中に入れ」

「……あ、はい」

「え、ちょっと待てよ! 俺まだ一森の下の名前聞いてない!」

「零、お前は俺だけ見てりゃいいんだよ」


 なんて会話をしている二人を背に、俺はゆっくりと目の前のドアに手をかける。

 零なんて名前、初めて聞いたな。
 もしかして、こんな時期に転入生か?
 三牧先生も珍しく零になついてるみたいだけど、クラスの奴らが見たら絶対に発狂するな。

 そこまで考えるが、自分が平和ならまあいいかとドアを開いた。


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