悪夢あげいん〜AKUAGE〜
五条の体が離れ、俺はようやく体を起こしシャツのボタンを留めながら(ほとんど弾け飛んでたけれど)、なぜか俯いている零へ視線を送る。
と、顔を上げた零に睨まれた。
ような気がした。
さっきも思ったけど、その髪のせいで表情がいまいちわからない。
「俺は……俺は絶対に諦めないからな!」
一体なんの話だろうか。
零の放った言葉の意味を理解しようと考え始めたときには、すでに彼はトイレから飛び出していた。
その瞬間、鳴り響いたチャイムの音にブレザーを羽織いながら五条へ顔を向けた。
「あの、俺教室に戻りますんで」
ネクタイを緩く締めながら彼に背を向けとびらに向かって歩き出した。
つもりなのだが、腕を掴まれてしまったせいでそこから先に進むことができなくなった。
そして耳に感じる柔らかなもの。
それが五条の唇だと気がついたのは、彼の声がダイレクトに聞こえてきたからだ。
「アイツとはもう関わるな」
関わりたくて関わってるわけじゃないんだけど。
しかも隣の席だから俺にはどうにもできない。
なんてことを五条に言えるはずもなく。
俺は口を開くこともなく小さく頷いた。
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