悪夢あげいん〜AKUAGE〜
一つのとびらの前。
四之宮さんは立ち止まり、胸ポケットからカードキーを取り出しドアノブの隙間に差し込んだ。
短く、小さな機械音が聞こえたかと思うと目の前のとびらが開かれる。
促されるまま俺は綺麗に片付けられている室内へ足を踏み入れた。
「紅茶でいいかな?」
「あ……ありがとうございます」
問いに返答することもなく、俺を部屋に置いて彼は紅茶を淹れに出ていってしまった。
閉じられたとびらを見つめ数秒。
一体なんなんだ、と短く息を吐き出しながら中央に置かれていたベージュのソファへと腰を落ち着けた。
十年前、この学園に通っていた生徒が自殺をした。
原因は、その年にやって来た転入生だという。
「自殺とか、物騒だな」
もし俺がそのことを知っていたらこの学園に入学していたか?
平和を望む俺としては、答えは確実に『ノー』だ。
けれど俺はそんな物騒な事件なんて知らなかった。
そして今さらになってその話題が浮上した。
それはきっと今年、季節外れの転入生がやって来たからだ。
今思い返すと、零が来る数日前からこの学園内は転入生の話で持ちきりだった気がする。
美人だとか格好いいだとか。
やってきたのはみんなの期待を見事に裏切ったマリモだったけれど。
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