悪夢あげいん〜AKUAGE〜


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 寮の扉の前、俺はカードキーを手にしたまま固まっていた。
 夕飯の材料を買ってくるのを忘れた。
 というより制服濡れてるし。
 こんな状態で帰ったらさすがに殴られてしまうだろうか。


「でも行くとこないしな」


 呟き手にしていたカードキーを隙間に差し込もうとした瞬間、俺の名前を呼ぶ聞き覚えのある声に眉間に皺が寄ったのは仕方のないことだと思う。


「三牧先生……」

「こんなに廊下ビショビショにして、誰が掃除すんだ?」


 最近、妙に三牧先生に絡まれるようになったのは零のせいだろうか。


「着替えたあとに掃除しますよ、誰かが転んでも危ないですし」

「ならさっさとしろ。今ここに零が走ってこないとも限らないんだしな」

「はあ、そうですね」


 気のない返事だったが彼の癪に障ったかどうかはわからない。
 代わりにわかったのは、カードキーを使い扉を開くと目の前に五条が仁王立ちしていたということだけだ。


「おせぇ」


 なんかデジャヴだぞ。


「ちょっと、色々ありまして」


 そう濁しながらタオルだけでも早く取りに行こうと五条の横を通り過ぎた。
 つもりだったのだが、手首を掴む強い力にリビングまで足を運ぶことができなかった。
 痛みが走るほどの強い力にわずかに眉を揺らしながらそちらへ顔を向けると、眉間に皺を寄せながら睨むように俺を見ている五条と目が合った。


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