悪夢あげいん〜AKUAGE〜


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 次の日、五条と顔を合わせることもなく登校し教室の扉をくぐり自分の席へと歩み寄る。
 と、置いた覚えのないものが自分の机の上に置かれていた。
 花瓶に、そこに飾られていたものは菊の花だ。

 縁起でもない、と思わず笑ってしまった。
 笑えているのに、胸の奥がモヤモヤとするこの感情はなんだ。

 クラスメイトが俺から一定の距離を置いてなにかを囁いていることがわかる。
 そしてその話に俺も関係しているということがわかる。
 そうでなければこれほど視線は感じないだろう。

 花瓶を逆手で掴むとどうじに無人の隣の席が目にとまる。
 今日はこれから登校してくるのか、それともすでに生徒会室で仲良く遊んでいるのか。
 どちらにしろ俺の平和を奪った零に怒りが込み上げてくるが、それを吐き出す術を知らない俺は担任の三牧先生が来るまで割れてしまいそうなほど強く花瓶を握り締めていた。



 花瓶は三牧先生に回収されてしまった。
 縁起でもないものを持ち込むな、ということらしい。


(持ち込んだのは俺じゃないんだけど)


 そう思うだけで言葉にできなかったのは、まだ平和を願っているからだろうか。
 もう平和になんてなれないと実感できたはずなのに。
 らしくもなく授業に集中もできず、そんなことばかりを考えていたらいつの間にか昼休みになっていた。

 零はまだ一度も教室に顔を出していない。
 このまま俺の前に現れなければいいと思ってしまうのは、ひどいことなんだろうか。
 重い体をゆっくりと持ち上げ、財布を手に食堂へ向かうと相変わらずそこは賑やかだった。
 だがその賑やかを感じられたのも一瞬だけで、食堂内でご飯を食べていた生徒が俺の姿に気が付くと一緒に食べていた生徒に耳打ちをした。
 そして耳打ちをされた生徒がさらに他の生徒へ耳打ちをして、一瞬で食堂内に静寂が訪れる。
 唾を飲み込む音でさえ響いてしまうんではないかと思うほど静かな空間に逃げ出してしまいたくなったが、視界の端に映った四之宮さんの姿に歩み進めることができた。


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