シロクロデイズ〜prologue〜


「そういえば今日は入学式でしたね」


 桜が咲く季節、白狐のお面を被っている俺はそんなことを呟いた。
 といっても入学式だと思い出したのは、学校の屋上から登校してくる皺のないパリッとした制服を着てくる一年生を見たからだ。


「さて、この中の何人が俺の獲物になることやら」

「相変わらず言うことがえげつねぇな」


 フェンスの向こう側、細い隙間に腰を落ち着かせ足を揺らしていた俺は品定めするよう生徒を流し見ていると、背後から聞き慣れた声が聞こえたため振り向いてみる。
 と、中学の時からの知り合いで俺の先輩でもある白柳(しろやなぎ)先輩がフェンスの向こう側に立っていた。

 俺よりも頭一つ分身長が高く、喧嘩が強く、白色の髪の色が特徴的な先輩だ。
 この先輩に出会ったほとんどの女はそのカッコよさに惚れて告白しては玉砕し、ほとんどの男は喧嘩の強さに惚れて弟子にしてもらおうとしては玉砕している。
 彼自身、人と関わることがあまり好きではないらしい。


「そうしなきゃ情報屋なんてやっていられないですからね」

「お前、今年も情報屋として学校生活を送るつもりかよ」

「もちろん。俺はこの命が尽きるまでずっと情報屋ですよ、っと……そういえば先輩、ここに来たってことは俺になにか用事ですか?」

「あぁ、そろそろ入学式が始まるってことを伝えにな。その調子ならどうせまた今年もやるんだろ?」


 放たれた先輩の言葉に『もちろん』と大きく頷いてからゆったりとした動作で立ち上がっては、すでに人のいない校門を見下ろしながら口元に笑みを浮かべた。


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