シロクロデイズ〜second day〜


 赤嶺が先を歩き、その後ろを追うように俺がついて歩いている。
 例えお面で視界が狭くなっても、小学校の頃から変わることのない赤嶺の態度。
 俺はそんな彼のことをなに一つわかっちゃいなかった。


『金久保さんと赤嶺さんの関係を教えてください』


 そう尋ねた俺の言葉に、彼は笑みを崩すこともなく平然と答えた。


『俺と総長はなんの関係もないよ。あの人と俺の間に人を置いての繋がりなら中学の頃からあるけどね』


 そして最後にアイツはこう言った。


『勘違いしてるかもしれないから言ってあげる。総長に背中を預けられるか、その答えはノーだよ』


 ノーって、金久保のことを信用してないってことだよな。
 それに人を置いての繋がり、というのも気になる。


(情報が足りなすぎる)


 内心、小さな溜め息をこぼしてからいつの間にか地面を見つめていた顔を持ち上げてみると、目の前には赤嶺が。
 へらへらっと笑いながら素早い動きで俺の顔に手を伸ばしたかと思うと、俺が避けるよりも早く被っていたお面を剥がした。
 突然のことに数秒、呆然と彼の顔を見つめた後、辺りを見渡してみると人影がなく思わず本気で安堵した。


「お、まえ、なにするんだよ! ふざけんなっ!」

「やっぱりそっちのほうがいいよ」

「は」

「敬語なんてクロちゃんには似合わない。誰もいないんだし、俺の前では外してよ」

「お前、な……」


 思わず深い溜め息をこぼしてしまった。
 恨めしげに彼を見つめてもお面を返してくれることはない。

 確かに俺としても赤嶺相手ならお面を外したままの、素のままの俺のほうが楽だ。
 というより、正直ずっと白狐のシロとしているのも疲れる。
 そんな俺に気がついているのかなんなのか。


「もしバレたらどうしてくれるんだよ」

「俺が一生そばにいてあげる。クロちゃんの命がなくならないように」


 言葉を失った。

 それは赤嶺の言葉が意外だったとか、嬉しかったとかそういうわけじゃなくて。
 最後の会話が三年前の、名前の知らないあの人に言われたことを思い出してしまったから。


『お前が本気で信用していい相手は、情報屋のお前のことを知っていて、その正体を知っても態度を変えないやつだけだ。少しでも表情に変化が出たやつはみんな敵だと思え』


 ああもう、ちくしょう。

 胸が、苦しい。


「クロちゃん?」


 俯いた俺の反応に、不思議そうに顔を覗き込んできた赤嶺に笑って見せるが、どうにも引き吊っているように感じる。
 だが彼はこんな俺の笑みになにも言わず、へらへらっと変わらない笑みを浮かべてくれただけだった。

 昔は理解のできなかったあの人の言葉。
 少しの表情の変化なんかわかるわけないだろ、と思っていたあの頃。
 今なら、わかる。

 赤嶺ならきっとずっと、なにがあってもこれから先も俺の味方でいてくれる。


「絶対に、そばにいろよ」


 味方を本気で信用しなくてどうする。


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