シロクロデイズ〜second day〜
「クロちゃん、このイチゴパフェ美味しそうじゃない? あ、でもクロちゃんはバナナ好きだからやっぱりバナナパフェかな。あーでもやっぱイチゴパフェも捨てがたいよねぇ」
結局お面を外したままファミレスに来てしまった。
まあ、俺が金久保のチームに関わるまでは普通に赤嶺と出かけたりしていたから、それほど意識はしなくても大丈夫だとは思うけれど。
「やっぱりバナナパフェにしよう。クロちゃんがバナナを頬張るエロい顔も見たいし」
「……赤嶺」
「んー?」
「いや、なんでもない」
コイツはバナナがカットされずに入ってると思っているのか。
そんなこんなで相変わらずバカな話をしていると、いつの間にかそばに男の店員が立っていることに気がついた。
俺に負けず劣らずの平凡な外見の店員は『ご注文をどうぞ』なんて、声まで普通だった。
「んーっと、このバナナパフェとメロンソーダとチョコレートソースがかかったホットケーキと……あ、味噌ラーメンとカルボナーラとナポリタンと、あとは――」
「待て」
「え?」
嬉々と注文していく赤嶺の言葉を思わず遮ってしまった。
「え、じゃないだろ。なんだその体に悪そうな大量のデザートと麺系は、一人で食うのか?」
「ほら、俺って成長期だから」
まだ成長する気なのかよ!
思わずそう叫びたくなったのも無理はないと思う。
声だけ聞けばのんびりとして、それでいてチャラチャラとした、それでも放たれる口調で俺と同じ身長かそれ以下を想像することだろう。
だが残念ながら違う。
コイツは俺よりも約十センチ高いのだ。
なぜ約なのか。
俺とコイツにそれ以上の差があることを俺自身が認めたくないからだ。
「クロちゃん、そんな目で見ても分けてあげないからね」
「……いらねぇよ」
一瞬、俺もそれくらい食べれば身長が伸びるんだろうかと思ってしまったのは口には出さないでおこう。
小さな溜め息をこぼしてから未だにそばに立ったままの、俺たちがさっさと注文をしないからかどこか困ったような表情を浮かべている店員に気がつきようやく俺も口を開く。
「俺はオムライスで」
「ケチャップはハートでお願いしますだってー」
「ふざけんな」
「あ、バナナパフェのバナナは丸ごとでね。切らないでね」
「おい」
「もう行っていいよ、よろしくねー」
なんという店員へのひどい扱い。
まるで逃げるように去っていく店員の後ろ姿を見送った後、睨むように赤嶺へ視線を移すが彼は相変わらずへらへらっと笑ったままだ。
「絶対に食わないからな」
「そんな、俺のバナナ食べたいでしょ?」
「下ネタやめろ」
「照れないでよ、可愛いなぁ」
もうダメだ、コイツ。
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