シロクロデイズ〜fourth day〜
体全体に冷たいものが走り抜けた。
シロと出会っての一年間、俺は自分自身が脅しのネタにされていたなんて気づきもしなかった。
そしてシロが姿を消してからの三年間も、俺は全く気づかなかった。
「そしてアイツは決めた」
顔はシロとしてのポーカーフェイスを保っているも、体の震えはとまらない。
「表面上、自分がいなくなったことにすれば問題は収まるんじゃないかってな」
「……表面上、ですか?」
「ああ。裏切り者には制裁を、ってやつだ」
まさかここでその話が出てくるとは思わなかった。
そういえば白柳先輩は話していた。
昔、チーム内に裏切り者がいて制裁という名の暴力を受けた、と。
まさか、まさか!
その暴力を受けた人物って!
「実際、なにも裏切ってなんかいなかった。でも少しも疑いが残らないようにチーム内のみんなを騙し、裏切り者として総長は暴力を受けた」
そう、全てはお前を守るためだけにな。
「し、ろ。シロ、シロっ」
「これで俺がお前を嫌ってる理由がわかっただろ? アイツは制裁を受けた日から一度も目を覚ましていない。あれもこれも、全部お前のせいなんだよ」
俺のせい。
俺がシロに付きまとったりしなければ、あの人は病院で何年も眠ることにはならなかった。
「お、れが。俺が、悪い。俺のせいで、俺のせいでシロが」
どうしてあのとき泣きそうな顔をしていたんだとか。
どうしていきなり俺の前から姿を消したんだとか。
俺は本当に馬鹿じゃないのか!
「シロ、シロっ……しろ」
「ここか!?」
バーから繋がっているとびらが勢いよく開かれた。
自己嫌悪に陥っていた俺は顔を上げる余裕もなく、向かいに座っている金久保の視線を感じながら頭を抱えていた。
なにやら怒鳴る声が聞こえるが誰の声なのか、正常な判断ができない。
「シロ、大丈夫か? なあ、シロっ」
シロは、大丈夫じゃない。
俺のせいで今も目を覚ましていないんだから。
「俺の、せいで、シロが」
「っ、金久保ッ! 一体シロになにを話した!」
「元白狐のシロ、お前の兄についてだ」
「だからってこれは異常だろ!」
「そりゃそうだ。お前ですら知らない話だしな」
怒鳴り声が、頭に響く。
もう俺はシロになんかなれない。
もうポーカーフェイスを保つことができない。
もう、心が粉々だ。
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