シロクロデイズ〜青木葉 宗慈〜


「信頼できる仲間なんていない。背中を預けられる仲間なんて、いないんだ」


 確かに宇緑には白狐のシロの情報を手に入れるために世話にはなった。
 けれどアイツとの関係はそれ以上でもそれ以下でもない。


「……青木葉」


 腕の中の彼が俺の名前を呟いたかと思うと、背中に両腕をまわされ突然のことにビクリと体が跳ねてしまった。
 そんな俺に気付いているのかはわからないが、腕の中で彼はもう一度俺の名前を口にした。


「俺がいるから、そんな寂しいこと言うなよ」

「黒滝、くん」


 予想外の言葉。
 暗闇の胸の奥に、ぽっと小さな明かりがともった気がした。


「言っただろ。俺はあんたと同じだって」

「……うん」

「あんたが仲間に恵まれなかったって言うなら、俺がいる」


 俺の心を揺るがすほどの強い言葉。
 昨夜の彼はあんなにも取り乱していたというのに。


「黒滝くんは強いね」


 腕の中にいたままの黒滝くんの体を解放しながらそう告げると、俺を見上げた彼の黒い瞳が少しだけ泳いだ。


「……俺は、強くなんかない」

「そんなこと──」

「シロが俺のことを忘れただけであんなに取り乱すんだ。強いわけがない」


 目を伏せ、自嘲気味に笑う彼を見ていられなかった。

 白狐のシロ。
 黒滝くんに好かれているムカつく男。
 俺ももっと早く黒滝くんに出会えていたら、誰かを傷付けることはなかったんだろうか。
 黒滝くんのこんな顔を、見なくてよかったんだろうか。


「……黒滝くん」


 名前を呼び、彼の頬に手のひらを添えると伏せられていた目は俺の姿をとらえる。
 触れられたことで動揺でもしているのか、目を泳がせている彼へゆっくりと顔を近付けては乾いた唇へと自分のを重ねた。

 嫌がられると思っていたから、受け入れてもらえたことに正直、驚いた。
 どうじに罪悪感を抱く。

 黒滝くんの弱みにつけ込んで、俺の弱みをさらけ出して同情してもらって。
 俺は最低だな。


「……ごめん」

「青木葉……」

「色々と、ごめん」


 返事はなかった。
 けれどその代わりに背中を撫でてくれる手から優しさを感じた俺は、彼の肩に顔を埋め涙を流した。


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